⽇本⽔循環⽂化研究協会 設⽴趣旨書
⽔は私たちの命と⽣活にとって最も基本となる資源であり、循環を繰り返す。降⾬、表流⽔、地下⽔、雲などの形態を繰り返す⾃然の⽔循環は、分割不可能で包括性をもつ。
そして、⽔循環の単位となる流域(圏)に暮らす私たちの⽣活は、⽔循環と深く関係する。戦後、⾼度経済成⻑と都市化が進んだ時代、⾃然の⽔循環から⽔資源が収奪され、膨張する都市の構造は⽔循環の健全性をおおいに損ない、結果として、⽔災害リスクの⾼まり、⽔質汚染、⾃然⽣態系のバランスの崩壊など深刻な弊害をもたらした。⽔循環は、社会的共通資本として社会全体で共有し、管理されるべきものであるが、流域社会は⽔を私的な利⽤の対象とみなしてきた結果、⽔循環は分断され、その恒常性は脅かされている。持続可能性への関⼼の⾼まり、気候変動による⽔災害の激甚化、急速に進む⼈⼝減少に対応するためにも、⽔循環と⼈との関わりを再構築することが求められている。こうしたなか、2014年、⽔インフラ政策の縦割り、⽔循環の分断を克服することを意図し、⽔は共有財であることを明記した「⽔循環基本法」が成⽴した。
本会は、「下⽔⽂化研究会」として1986年に活動を開始し、1999年からNPO法⼈「⽇本下⽔⽂化研究会」として、個⼈や社会と下⽔との成熟した付き合い⽅(これを「下⽔⽂化」と呼ぶ)を通して、市⺠⼀⼈ひとりの責任ある⾏動を促すことを意図して活動してきた。そのなかで、「⽔循環基本法」の制定にも深く関わってきた。今後、⽔循環基本法のより適正な施⾏を訴え、下⽔⽂化の枠を超えて、改めて広く⽔循環と⼈との関係(これを「⽔循環⽂化」と呼ぶ)を探求していくことが必要であるとの認識から、会名称を「⽇本⽔循環⽂化研究協会」と改め、活動していくこととした。 改められた会の名称のもと、次のような活動を展開していく。まず、⽔循環の健全化へ向けた⾏動を実践するための諸能⼒の向上を図るため、社会学習の機会をつくりだし、⾃然⽔循環の諸相における健全性、再構築された⽔と⼈との関係をベースとした流域社会のあり様に関する議論を深めていく。
こうした議論を踏まえて、⽔循環に関わる多様な関係者からなる「⼈の輪」を動かし「⽔の輪」を形成するとともに、市⺠と協働し、⽔循環再⽣や⾃然と共⽣する社会の構築に向け、主体的に⾏動していく。さらに、⽔管理に関する諸制度の整備・拡充、⽔インフラへの新たな役割の付与など、⽔循環管理に関わるガバナンスの向上に資する政策提⾔を⾏っていく。 国内ばかりでなく、開発途上地域での⽔と衛⽣分野の国際協⼒活動として、飲料⽔の安全性を確保し、下痢症等の感染リスクを制御することを⽬標とする活動実践を継続する。こうした活動の視座として、コミュニティをとりまく⾝近な⽔循環・資源循環を重視する。今後は、現地の能⼒開発を⽬指すとともに、これまでの経験を国内にもフィードバックすることを念頭に、⼈⼝減少下の⽇本社会における⽔・衛⽣インフラの分散管理などに知⾒を反映させていく。