地域のエネルギーを拓く「小水力発電」を考える・講演会報告

水循環文化研究会・定例研究会報告

地域のエネルギーを拓く「小水力発電」を考える

3月8日、横浜駅近くの会議室において、一般社団法人水力発電を推進・支援する会(以下、「水推会」)の吉岡一郎氏、島田保之氏を講師にお迎えし、「我が国の水力発電の現状と目指すべき将来~地域に貢献する小水力発電の普及拡大を目指して~」と題する講演をお願いしました。当日は対面で10名、リモートで4名の参加がありました。本講演会は、昨年度から行っている水循環勉強会の一環で、定例研究会として開催しました。

講演会では、水力発電の多様な価値を理解し、その日本における現在地、そして将来展望として地域主導による小水力発電の可能性について議論されました。

吉岡氏による「水力発電の歴史・価値・小水力発電の重要性と課題」

水推会・代表理事の吉岡氏からは、水力発電の豊富な経験を踏まえ、本日の基調的な講演があり、まず、水力発電の歴史と現状を概説されました。

  • 水力は、戦後から1960年代までは主力電源であったが、現在では7〜8%程度に低下している。FIT制度導入後は太陽光発電が急増した一方、水力は新設よりも既設発電所の改修が中心となっている。
  • 水力発電は、脱炭素エネルギーとしての貢献、出力の安定性、耐用年数が長いなどの特性を有し、かつ全国に未利用ポテンシャルを有している。
  • しかし、国家的方針の欠如、人材不足、初期費用が高いこと、地域との関係構築の難しさから、水力発電の開発は停滞している。

吉岡氏は、現在の再エネ政策が地域に十分な利益を還元していない点を指摘され、地域主導型小水力発電には、「地域による主導」、「地域組織による意思決定」が備われば、「利益の地域還元」がもたらされる可能性が大きいことを強調されました。水力発電は地域創生とゼロカーボン目標の両立に資する仕組みとして位置づけられ、地域主体の体制構築や専門家との連携強化が今後の重点課題になると指摘されました。

島田氏による「事例紹介:地元主導の小水力発電」

続いて、水推会・業務執行理事の島田氏からは、全国各地の小水力発電の実例を紹介し、地域主体の取り組みが持つ可能性と課題を具体的に示されました。

主な紹介事例は、以下の通りです。

  • 福井県敦賀市・黒河川水力(499kW)
  • 福井県池田町・水海川発電所(199kW)
  • 岡山県西粟倉村・第2発電所(199kW)

これらはいずれも地元企業や自治体、有志が主導して建設し、稼働されているものです。特に西粟倉村では、既設の床固工を取水口に流用し、村道に水圧管路を埋設するなど、地域の知恵を活かした工夫が紹介されました。

小水力発電の課題として、経済性があげられ、1kWあたり200〜250万円という建設単価は、円安や資材高騰でさらに上昇しており、取水口や沈砂池の設計不備により砂礫が水車に流入するといった技術的課題も報告されました。

今後、水推会が取り組まれて行かれることとして、小水力発電に関する啓発活動の継続、地域主体の小水力推進体制の構築や専門家との連携強化へのサポート、成功・失敗事例の整理と共有などがあげられました。

講演後の討議では、小水力発電の計画・設計上の制約、既存設備の活用方法、安全性への配慮、河川・道路管理者との調整などが議論されました。西粟倉村の事例においては2つの発電所の合計出力約500kWにより村の電力需要の約50%を賄えるとの質疑応答がありました。

本講演会は、水力発電の現状を理解するとともに、地域主導の小水力発電が持つ可能性と課題を多角的に共有する貴重な機会になったと思います。小水力発電の普及には、地域の主体性と専門家支援の両輪が不可欠であることが確認され、水推会によって、地域主導型小水力発電の普及に向けた実践的なアクションが起こされていくことを期待したいと思います。

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