水循環教材のまえがき(暫定)
本書の目的
このような水環境に関わる問題は、水循環が健全な状態ではないことと深く関わっているということができる。人間の体に例えれば、あちこちが病んでいると言うに等しい。そして、健全とは言えない水循環は、私たちが効率や便利さを求めてきたことと深く関わる。私たちが車を多用して足腰が弱くなるのと同じように。
多くの人は、その関りに気付かなかったり、水害や地下水の枯渇などの被害を知識としてもっていたとしても他人事、自分とは関りがないと思っていたりするのではないだろうか。なかには、たとえ水環境が犠牲になっても、将来世代が水の恵沢を享受できなくなろうとも、経済がだいじ、自分の収入がだいじと思っている人がいるかもしれない。
しかし、日本に暮らすほぼすべての人は、健全でない水循環の影響や弊害を被るリスクにさらされている。それだけでなく、知らず知らずのうちに水循環に影響を及ぼす原因者としても水循環と関わっている。すなわち、水循環の健全化は、すべての人が自分事として認識するべき課題であり、ひとり一人の行動変容が水循環の健全化に寄与するポテンシャルをもっている。こうした認識は、温暖化をはじめとする地球規模の気候変動に対して、多くの人が抱き始めている認識と共通する。そして多くの人が、ライフスタイルを変え、商品選択などを通した行動変容を始めている。
日本水循環文化研究協会は、これまでの人と水循環の関係を見直し、次の世代に健全な水循環を継承していくというビジョンのもとに活動しているNPO法人である。このビジョンを社会に実装するためには、広範な市民層が、日々の暮らしと水循環の関係性を学び、水循環の健全化に向けた行動を実践するための諸能力、すなわち水循環リテラシーを向上させることが必要である。本書では、多くの問題事例や、水循環健全化へ向けた活動事例を通して学んでいただくことを意図して企画・編集した。なお、内容を高校生が理解できるように配慮したつもりである。
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